山梨/Yamanashi

[Shop] Wine Cellar HASEBE 長谷部酒店

Key Features

・山梨県大月市にあるお店
・オーナーはワインアドバイザー選手権大会優勝者
・厳選された、幅広い600アイテム前後のワインセレクト
・ワインショップに行く醍醐味を感じさせてくれるお店

日本ワインの名産地、山梨県。そんな山梨県には複数の優れたワインショップがそれぞれかなり違った特徴を持って点在していると勝手に思っていますが、ここWine Cellar HASEBEもそんなお店の1つ。

山梨県大月市にある、JR中央本線の猿橋駅。その猿橋駅から徒歩で約15分のところに、Wine Cellar HASEBE 長谷部酒店があります。数ヶ月前、家族旅行の帰路の途中にこちらに立ち寄りました。お店の近くには、観光スポットの猿橋があります。私がこちらのお店にいる間、妻と子供たちは猿橋、そして近接する公園で楽しい時を過ごしていました。家族連れの方もこういう立ち寄り方ができるロケーションに、Wine Cellar HASEBEがあります。

Wine Cellar HASEBE 外観
シックな佇まいのあるお店。お店の脇に駐車スペースあり。猿橋公園で車を停めて3分ほど坂を登って歩いてもいける。
猿橋
こじんまりながら素敵な観光スポット、猿橋からも近い。

さて、Wine Cellar HASEBEに来てみて感じたこのお店の魅力。それは、

「非日常的な日常」を感じさせてくれる、ワインショップの醍醐味が溢れるお店

ということでした。多くの方が遠方からでもこちらに立ち寄りたくなるのは、きっとこれが理由ではないでしょうか。

様々な肩書を持つ、業界でも著名人のオーナー

まずこのお店の最大の特徴は、なんと言ってもオーナー。もの凄い方なんですよね。

日本ソムリエ協会が過去に開催していた権威ある大会、ワインアドバイザー選手権大会の第9回にて念願の優勝を果たした、オーナーの長谷部賢さん。長谷部さんは2021年現在、日本ソムリエ協会の理事でもあります。こんな方がオーナーのワインショップでかつ店頭にもいらっしゃることが少なくない、というお店はあまり他にはないのではないでしょうか。そんな長谷部さんにワインを選んでもらう、ということだけでも非日常的で贅沢。

長谷部賢さん Wine Cellar HASEBE
長谷部賢さんは老舗酒店の4代目。色々な質問にとても丁寧に答えてくださいました。

長谷部賢さんは父親から酒屋を継ぐことになった際、酒販店を守っていた免許制廃止を見据え、ビールの取扱いが7割だったお店に新しいメインを据えようと考え抜き、とある出来事をキッカケに、ワインを猛烈に勉強し始めたそう。

そして1999年に開催された第3回ワインアドバイザー全国選手権大会に出場。準決勝に勝ち進んだものの、その準決勝では惨敗。この大会で優勝したのは、今や世界的権威であるMW(マスターオブワイン)の大橋健一さん。この時に実力の差を感じつつも、絶対にリベンジする、と長谷部さんは心に誓います。数回準優勝まで上り詰めるも、あと一歩が遠い。「次が最後」と自分自身を奮い立たせて臨んだ、7度目の挑戦。その第9回大会で、見事優勝したんですね。壮絶なコンクールの挑戦を10年以上に渡り挑戦してきた、ということには本当に脱帽します。

これだけではありません。長谷部さんは日本ソムリエ協会認定ソムリエ・エクセレンス(昔はシニアソムリエ、という呼称でした)。そしてコンセイエ。更には日本では2021年現在12名しかいない、ボルドーワイン委員会認定講師でもあります。ワイン笑講座、というビギナーから楽しめるワイン講座を昔から開講されていて、テレビ・ラジオ出演も多数。セミナー講師も務めたり、執筆・寄稿やワインコンクールの審査員を勤めるなど、ひっぱりだこなんですね。

長谷部酒店
お店の公式ツイッターアカウントから拝借。大月短期大学とNHK甲府局のダブル取材を受けている様子。

そんな長谷部さんが作り上げてきたお店も当然ながら、魅力に溢れています。

しっとりと落ち着きのある、ハイセンスな店内

長谷部酒店は以前は昔ながらの酒屋の趣のあったお店のようですが、2019年に全面的にリニューアル。

Wine Cellar HASEBEとして生まれ変わった店内は、非常に丁寧に1つ1つのワインが整理して並べられています。ゆとりのあるスペースの使い方。そして木目調の天井や棚と大きな窓から入る光も相まって、明るくも落ち着いた、大人な雰囲気に包まれています(もちろん、日光が直接窓から当たりそうな場所にはワインを置かない気遣いもされています)。一瞬大月にいることを忘れさせてくれる。それくらい、周りの雰囲気と比べると非日常感を感じさせてくれる店内となっています。

長谷部酒店 Wine Cellar Hasebe店内
天井まで木目調。床や壁共に色が統一されているので落ち着きがある。店内奥にはウォークインセラーが。
Wine Cellar HASEBE 店内2
店内中央の棚は背が低い棚で一部ガラス張りなのがオシャレ。ここもイベント時にはカウンター代わりにできるのかも。

なお上の写真にもある通り、店内にはテーブルもあって、テイスティングイベントを開催することもあるよう。また店内では複数のワインの有料試飲もできます。

長谷部さんの説明を聞きながらの試飲やテイスティングイベント、一度参加してみたいなぁ。本当に非日常的な日常ですよね、こういう時間を過ごすの。とてもこういう時間の過ごし方が好きなんですが、私と同じく好きな人、結構いらっしゃるのではないでしょうか。

テイスティング 長谷部酒店
お店の公式ツイッターアカウントから拝借。レジ横にカウンターがあるためここも試飲スペースになる。

なお新型コロナウイルスの影響でお店での有料試飲やテイスティングイベントが中止となっていることもありますのでご注意ください。逆に生産者と一緒に行うオンラインでのセミナーを主催されたりしていることもあるので、お店の公式ツイッターアカウントは要チェックです。

年間2,000アイテム以上をテイスティングする中で選ばれたワインたち

そんなお店には、600アイテムを超えるワインが並んでいます。

取り扱われているワインの特徴としてはまず、価格帯がかなり幅広い。1,000円台のワインもそれなりの数が置いてありますし、2,000円台から7,000円台くらいのワインもかなり多いものの、もっと上のクラスのワインも結構置いてあります。恐らく店頭に並んでいないものもあるのではないかと思います。より多くの方に本当に美味しいワインを届けたい。自分好みのワインを見つけて欲しい。そんな気持ちが表れているかのような、幅の広さ。

長谷部酒店 店内
1000円台〜2000円台でもかなりラインナップが幅広い。取り扱い地域も広いけれど、様々な葡萄品種のワインが置いてあるイメージ。
ゲオルグ・ブロイヤー
ドイツの名生産者、ブロイヤーのワイン。このエチケットのアイテムは見たことなかった。有名どころのワインでもこういったちょっと他では見ないものも結構あるのがいい。

ワインの生産地域や国で見てもかなり幅広い取り扱いとなっているのも特徴的ですが、お店の場所柄、特に山梨産のワインを始めとした日本ワインが多く取り扱われていのももう1つの大きな特徴。なかなか普通のワインショップではお目にかかれない日本ワインもあるのも魅力的です。

ダイヤモンド酒造 マスカットベーリーA
マスカットベーリーAの魔術師、ダイヤモンド酒造。意外と山梨県外のワインショップで見かけることが少ない気が。
このあたりもあまり見かけない。興味深いものが多い。

そしてお店の奥にあるウォークインセラーには、その中でも厳選されたプレミアムワインが、非常に美しく並べられています。ここにはついつい長居してしまいました。

Wine Cellar HASEBE ウォークインセラー
ここまでキレイなウォークインセラーは「酒店」とつく名前のお店ではなかなか見かけない。

なお置いてあるワインに共通して感じられたことがあります。それは、取り扱っているもののほとんどがクリーンなワインではないか、ということ。クリーンで美味しいワイン、偏見なくそういったものを選んでいる。そんな気がしました。

というのも、自然派ワインの中でも自然派ワインであることが前面に現れているようなワインはあまり見かけませんでした。でも自然派ワインを取り扱っていないわけではありません。カテゴリーやスタイルでワインは選んでない。純粋に飲んで美味しいワインを選んでいる。そんな気がしました。

マキコレワイン
サム・ハロップMW監修のSummer Houseの隣には、マキコレワインのGuy Allionのワイン。こちらは自然派。以前飲みましたが、本当にキレイな造りのワインで美味しい。

事実、長谷部さんにお伺いしたところ、1年間で2,000アイテム以上のワインをテイスティングしていて、その中から本当に美味しい、というものを選んでお店で取り扱っているそうです。この事を話してくれた時の長谷部さんの眼差しや口調は柔らかながら真剣。プロ中のプロがワインを厳選しているのが伝わってきました。

なお長谷部さんは、過去の雑誌の取材で「品質を見極めるチカラは山梨のワイン醸造家に育ててもらった」と語っています。ワインの良い部分を見つけるソムリエとしての研鑽と、ワインの欠陥をまず見極める醸造家からの教え。この双方を身につけた長谷部さんが厳選するワイン。美味しくないわけがありません。買って飲んだら落胆するワイン、というのに出会うことがたまにありますが、それはこちらのお店ではないな、と強く感じました。

ワインショップに行く醍醐味を感じるお店

これまで述べてきたように、オーナーの長谷部さん、お店の空間、そしてセレクトされたワイン。どれもが非常に魅力的なお店であるからこそ、遠方から遥々来る方も少なくないそう。

そんなWine Cellar HASEBE/長谷部酒店には、「オススメのワインを帰ってから飲んだら、本当にバッチリ好きな味わいでした」という評判やコメントがGoogle Map上の評価を始めとして、とても多い。

「お客様と話をしながら、好みのワインを探りあてていくことにやりがいを感じる」

と語る長谷部さん。これは顧客側から見れば、ワインショップでワインを買うならではの魅力ですよね。これこそまさにワインショップに行く醍醐味ではないかと。

オンラインで様々な本を買うことができるようになっても、私も含めて多くの人は本屋に足を運びます。それは何故か。人によってその理由は様々だと思いますが、きっと、「一期一会」があるからではないでしょうか。オンラインにはない、圧倒的な一覧性のある書架を眺めながら、時には書店のコメントを見て、時には本を手に取り、時には中身をパラパラめくったり。そして「へぇこんな本あったのかぁ」という出会いに小さな喜びを感じ、購入して帰る。このリアルな一期一会が、日常なんだけれどもちょっと非日常的。これが書店に行く魅力。

ワイン たち2

ワインショップの魅力も似ています。オンラインショップでは体感できない、「へぇこんなワインもあるんだぁ」という、意図していなかった偶然の出会い。でも本とは違って飲むまで中身は分からない。だからショップの店長や店員さんと話を交わしながら、ボトルを見るだけでは分からないそのワインの秘話や生産者に関するストーリーを聴きながら、様々な想像を巡らせる。そうして気になったワインを買って帰ったのち、「さぁどういう味わいだろうなぁ」なんて期待と不安を抱きながら、ワインを口にして、喜びと発見を改めて味わう。そんな非日常的な一期一会があるところに、ワインショップでワインを買う醍醐味があると思います。

Wine Cellar HASEBE / 長谷部酒店は、そんなワインショップを訪れる醍醐味が詰まったお店。

大月に立ち寄る際は、この非日常的な日常をぜひ味わってみてください。

Wine Cellar HASEBE

General Information

Wine Cellar HASEBE 長谷部酒店
住所:山梨県大月市猿橋町猿橋200
定休:木曜日、第3日曜日
Web: https://twitter.com/HasebeWine