埼玉/Saitama

[Shop] 助治郎酒店(埼玉県見沼市)

Key Features

・自然派ワイン、フランスワインの驚きの品揃え
・売り場全てが温度管理されたセラー
・オンライン販売取扱商品が充実
・店長のワイン選びの的確さと早さが驚き
・日本酒の取り扱いもあり

助治郎(Sukejiro)酒店の入り口の前に立って、入り口のガラスドアを見たときに感じた、

「えっ?」

という、小さな驚き。その感覚を、今でも覚えています。

助治郎酒店 外観
助治郎酒店の入り口。この写真だと分かりにくいが少し変わっているところが。。。

オンラインでワインを購入する場合、結構重要なのが、そのショップがどのようにワインを保管しているか。

これはワインの品質、特に自然派ワインの品質に顕著な影響が出るポイントです。ワインというのは保管状況によっては、さっぱり味わいが変わってしまいます。暑かったり乾燥しすぎたりするのはNGですが、逆に普通の冷蔵庫のような2℃とか3℃とか温度が低すぎるところに長期的に保管すると、ワインの果実味に影響が出ることも少なくありません。適切な温度と適切な湿度で管理されているか。それが非常に重要。

その点、助治郎酒店は、隙がありません。

濡れて曇っていた入り口のガラスドアが、それを物語っていました。そのことにちゃんと気づいたのは、お店を出るときのことでしたが。。。

早期から自然派ワインに力を入れてきた老舗酒屋

埼玉県見沼市にある助治郎酒店。大宮駅から車で10分程度、東武アーバンパークラインの七里駅から徒歩10分ほどの場所にあります。

助次郎酒店は酒屋としては100年近く4代に渡って続く歴史ある老舗。30年ほど前にお店の内装をリニューアルし、その頃からワインを扱うようになったそうなのですが、20年ほど前、酒類の取扱い自由化が近々なされる、という状況の中、4代目である現在の店主の松本和均さんが経営に携わるように。元々ワインが好きだった松本さんは、酒類の取り扱い自由化のことも念頭に、ご自身で勉強しながら、お店の商品をワインと日本酒に特化したそうです。現在はお店全体で扱っているお酒のうち、8〜9割がワイン、1〜2割が日本酒、といったところでしょうか。(日本酒は種類は少ないかもしれませんが、ご近所の隠れた銘酒・九重桜や、能登の吟醸酒で有名な満寿泉、人気絶頂の田酒など素晴らしいものが置いてあります。)

助治郎酒店の最大の特徴の1つは、自然派ワインを中心に扱っていること。取り扱っているワインのほとんどが、自然派ワインまたはより自然な作り手のワインで、フランスワイン、及びイタリアワインが非常に多い。またシャンパーニュなどのスパークリングワインの品ぞろえも結構スゴイんです。

助治郎酒店 スパークリング
最上段に並ぶのは全てシャンパーニュ。もちろん店頭に並び切れてないものも。

例えばシャンパーニュ。ビオロジックによるシャンパーニュの先駆けであり、1989年からビオディナミでシャンパーニュを生産するFleury(フルーリー)や、Marguet(マルゲ)、といった自然派の造り手を始めとして、厳選された生産者のシャンパーニュが常時60〜100アイテムも取り扱われています(完売になったり新入荷があったりで常に変動)。一方でシャンパーニュ以外のスパークリングワインの品揃えも多く、こちらも40〜60アイテムほどの取り扱いがあり、これだけ多くのスパークリングワインを取り扱っている店舗はそうそう多くはありません。なお、シャンパーニュ以外のスパークリングワインは2,000円台、3,000円台のものがかなり多く、リーズナブルなラインナップで上質な泡ものが多く扱われているのも凄いところ。

助治郎酒店 アライジュンコ ワイン
フランスで自然派ワインを造る新井順子さんによる今年のヌーヴォースパークリングワイン。泡ものの在庫はバラエティに富む。

一方、スティルワインの品揃えも見事。全部で1,000アイテム以上のワインを自然派ワインを中心に取り扱っていますが、有名無名、安い高いに関わらず、超高級ワインを除き店主の松本さんが自ら試飲。本当に美味しいと思ったものだけを取り扱っているそうです。そのような観点からか、1つの生産者のワインの品揃えがかなりいいんですよね。

助次郎酒店 店内2
例えばアルザスの自然派ワインだけでもこれ以上の製品の取扱いがある。ジェラール・シュレール、この写真の上段に見えますがたくさんありました。
助次郎酒店 店内3
同じ生産者のワインのラインナップが結構揃っている。この絵で描かれたエチケットのワインはイタリアの自然派の作り手のワインたち。

取り扱っているワインの価格帯はかなりバラバラですが、1,000円台から3000円台のワインも結構取扱いがあります。多いのは2000円~1万円くらいまで幅がある印象でした。

そして扱っているワインの味わいのスペクトラムとしても、思い切り自然派色の強いワインから、比較的クラッシクな味わいのワインまで、幅広い。特にボージョレを含めたブルゴーニュワインの品揃えは凄い。。。

カリーム・ヴィオネ ワイン
ボージョレの自然派ワイン生産者として人気の高いカリーム・ヴィオネ。エントリーレンジのワインが売っているところは多いが、このChenasというクリュのワインはあまり見ない。素晴らしかった。。。3,000円台で素晴らしいワインが結構置いてある。
助治郎酒店 店内6
一方で自然派色が強すぎないクラッシック寄りなワインも多数。
助治郎酒店 店内12
垂涎もののブルゴーニュワインの品揃え。。。これはほんの一部。

ワインに優しく、店員に厳しい、店全体の温度管理

そして助治郎酒店のもう1つの大きな特徴は、店全体の温度管理を含めたワインの管理状態の徹底ぶり。何よりも驚いたのは温度管理。

店全体がセラーになるように温度管理されているのですが、その温度、なんと13℃。ウォークインセラー並み、またはそれ以上の寒さなんですね。

冷房をちゃんと常に効かせているワインショップでも、ウォークインセラー以外は低くても16℃〜18℃くらい。今これを書いている11月初旬の夜の外が13℃。この13℃の店内で、店主夫妻は365日働いています。

なぜこれほど徹底的に温度管理にこだわるのか。それは、助治郎酒店が扱うワインの特徴故でした。

自然派ワインは二酸化硫黄(SO2)が無添加のものも少なくなく、またワインをボトリングするときにフィルターをかけていないもの、フィルターをかけていても弱めなものも多いため、ワインの中に残った酵母が温度が上がることによって再発酵してしまう恐れがあります。そうすると味わいは極端に変わってしまう。スパークリングワインの場合、下手をすると瓶が破裂することも。

また仮に再発酵しないとしても、温度が高いとワイン中の化学反応によって味わい等に影響が出やすくなります。

助治郎酒店 店内6
お店の中はヒンヤリしており、夏にTシャツで行くとめちゃくちゃ寒い。なお、写真では明るく見えるが、照明も明るさを落としていて徹底されている。

「最初はワインセラーを1台購入して回して使っていたんです。ただ自然派ワインをメインとして取り扱うようになって、ワインの品質を良好に保つには、やっぱりお店全体をセラーにしないといけない。しかもSO2無添加、ノンフィルターのワインなども考えれば、16℃じゃやっぱりダメ。13℃くらいにしたい。でもお店の営業を止めて工事をすると営業停止期間が長くなるし、その間にワインの品質が落ちてしまう。だから自分たちで色々工夫して営業を続けながらお店全体をワインセラーにしてきました。」

そう話をしてくれたのは、オーナーであり店長さんの松本さん。

「普通、空調って初期設定の制御機能があるから、室内の温度って16℃くらいまでしか下がらないんです。そのため、自分たちで制御機能を解除して、温度が13℃まで下がるようにしました。そうしたら夏になると湿気がものすごくなって、天井やらダウンライトが天井裏の湿気の影響で金属が錆びて落下してきたりしたんですよ。そのためその辺りを修理したり、自分たちで全て天井を張り替えたりしました。」

凄すぎますよね。。。店内の温度の低さと湿度もあり、前述の通り、夏はお店の入り口のガラス扉が常に曇っているんですよ。こんなお店なかなかありません。

また照明もワインの変化を最小化するために、間接照明や紫外線がカットされた照明を使っています。振動にも気を使っていて、その辺りの気配りは徹底されています。

助治郎酒店のウェブサイトTOPページ

なお、助治郎酒店ではウェブサイトでのオンライン購入も受け付けています。1999年からオンライン販売をしているので、オンラインのワイン販売店としてもかなり老舗。

自然派ワインをネットで買う際、「管理状態はどうなんだろうか。。。」なんて思うことがあるかと思いますが、これだけ管理が徹底されているとかなり安心。そして助治郎酒店ではネット注文を受けたワインを配送する国内輸送もリーファー便またはクール便等で対応しているようです。自然派ワインの美味しさをできる限りそのまま消費者の元に届けたい。その想いが如実に現れています。

オンライン販売については更に特筆すべき点が。ワインショップでオンライン販売もしている店舗でも、ほとんど全ての在庫製品をオンラインで注文できる、というお店はかなり少ない。その点、助治郎酒店ではお店にあるほとんどのワインがオンラインで購入可能とのこと。新着ワインも毎月すごい数が入ってきていて、人気のワインはオンライン購入でも争奪戦のようです。注文も日本全国から入るそう。お店のウェブサイトで会員登録をすると、会員専用ページで新着ワインやその他の情報が見れたり、そういったお知らせのメルマガが届くようになっています。

店主・松本さんのティスティング能力とオススメの正確さ

そして個人的に凄いと思った助治郎酒店のお店のもう1つの特徴は店主・松本さんのオススメの正確さと判断の早さ。

助治郎酒店にはこの投稿を書く前に2回お伺いしているのですが、1回目はガッツリ自然派色の強めのワインを購入し、2回目には「自然派の味わいがあまり前面に出ていない、クラッシックなタイプのものがあると有り難いのですが」と聞いてみました。

すると松本さん、2つほど私に質問した後、3秒くらい考えてから、レジを出て、すたすたと歩き、ワインが入った段ボールで隠れて見えないところに手を伸ばし、それほど探すことなくスッとシャブリを取り出し、そしてまたすたすたと歩き、今度は迷うことなくあるダンボールを開けてそこからグレーコ・ディ・テューフォ(イタリア・カンパーニャ州で同名の葡萄で作られるワイン)を取り出して「それならこの辺りがいいと思いますよ」とお勧めしてくれたのですが、、、これがまたドンピシャだったんです。

Chablis 助治郎酒店
Domaine 47N3E (キャホンセット・エヌ・トワ・ウ)のシャブリ。ビオディナミながら、クラッシックなシャブリの味わいに少しアクセントが加わったような、素晴らしい味わい。
グレーコ 助治郎酒店
ハイコストパフォーマンスのグレコ・ディ・トゥーフォ。黄色いフルーツの香りにスパイスやスモーキーな味い、そしてストーニーなミネラル感などもあり、その他の要素もあり多層的な味わいがある。

普通、「そうですねー、それだったら、、、」と考えながら棚を見ながら探すんですよ、こういう場合。しかもそれで探してもらっても、実は店主の好みが入っていることは少なくありません。自然派ワインを扱うお店だと、同じように質問しても、確かにクリーンだけどやっぱり自然派の味わいだよな、というワインをお勧めされることもある。しかし松本さんは違った。棚を見て考えることをしない、早い。そして正確。

それもそのはず。松本さんはあのワイン雑誌、「リアルワインガイド 」でもテイスターをされていた腕の持ち主。テイスティング能力が格段に高い。でもそれだけではなく、顧客の好みや要望を的確に捉え、自分の記憶の中にある棚からワインを正確に選ぶ。これはなかなかできそうでできない。そう思います。

助治郎酒店 店内 11
国も葡萄品種も特定せずにお勧めを聞かれたら、私なら店内をウヨウヨと迷うと思う。それくらいたくさんのアイテムが置いてある。

オンラインで自然派ワインを購入したい方には確実にお勧めできるワインショップ 、助治郎酒店。

自分たちが美味しい自然派ワインをオンラインで購入できる裏では、これだけの徹底した管理と信頼できる人がいることを忘れてはいけないですね。

店主の松本さんがおっしゃっていたこの言葉が、心に染みました。

「ワインにはとてもいい環境ですけど、でもはっきり言って働く人間には過酷ですよ。ここは。」

General Information

助治郎酒店(Sukejiro)

住所:埼玉県さいたま市見沼区風渡野200-1
定休:毎週木曜日
WEB: http://www.suke.co.jp/index.htm