オンライン専門店/Online Shop

[Online Shop] ポルトガル・トレード

ポルトガルトレード ドウロ渓谷

「オンライン限定ショップ」を紹介するシリーズの第一弾。

「自分好みのワインを見つける近道。それは自分好みのワインショップを見つけること。」

これがこのウェブサイトのコンセプトですが、自分好みのオンラインワインショップを見つけるのは結構難しい。

実店舗である酒販店の場合はお店に行けばお店の方の人となりも分かるし、どんな基準でワインを選んでいるのか、話もできます。でもオンラインショップはそうはいかない。オンラインでそのお店から購入したことがあっても、果たして自分に合っているワインショップなのか、よく分からないことが多い。だから取材などを通じてオンライン限定のワインショップの見えない側面を紹介しよう、というのがこの特集の趣旨です。

ちなみにショップ側から宣伝料をもらったりしているわけではないので(もらえるようになりたいなぁ笑)、「ここ、いいなぁ」「ここ、興味深いなぁ」「みんなにもっと知ってもらいたいなぁ」というところを私の独断と偏見で選んでいます。

その初回に取り上げるのが、ポルトガル・トレード。

まずはざっくりとどんな会社なのかをご紹介。

ポルトガル・トレードの概要

ポルトガルトレード Website Top
ポルトガル・トレードのウェブサイトのトップページ

ポルトガル・トレードはポルトガルワイン専門のインポーター。ワインのインポーターには、自らオンラインショップや実店舗でワインを販売しているところもあれば、自分たちで直接販売はせず、酒販店や飲食店への卸販売のみを行っている、というところもあります。ポルトガル・トレードは前者。そして実店舗はありません。だから同社が輸入するワインを飲みたい場合は、取り扱っているワインショップから直接購入するのでなければ、オンラインで購入する他ありません。

取り扱っているポルトガルワインは様々。北はドウロ渓谷のワインからヴィーニョ・ヴェルデ、そして南ではセトゥーバルやアレンテージョ地域のワインまで、様々な製品ラインナップを揃えています。ポルトガルワイン専門インポーターの最大手よりは若干少ないものの、それでも赤ワインとロゼワインで40アイテム前後、白ワインが25アイテム前後、ポートワインが約10アイテムとかなり幅広いラインナップを揃えています(本記事の執筆時点)。

ポルトガルトレードのワインたち
多彩なワインのラインナップ。

そしてバリエーションのあるこれらのワイン選びをしているのが、同社代表であり、ワイン資格として難関のWSETのDiplomaを取得しているDipWSETのPaulo Ramos(パウロ・ラモス)氏です。

いつもスーツで仕事をするPaulo。

日本におけるポルトガルワインのインポーターでポルトガル人が代表を務めている会社は他にはあまりないと思います。しかもその代表がWSETのDiplomaホルダー。これだけでも相当貴重。

でもその点以外にも、他のポルトガルワインを扱っているインポーターとどういったところが違うんだろうか。また同社が扱っているワインはどういう基準で選んでいて、どのような共通性があるのだろうか。こういった疑問が前々からありました。

そこでポルトガル・トレードの代表のPaulo、そして同じく代表の御子神佳奈(みこがみかな)さんに取材をしてこの記事を書いています。

優しいご夫婦の2人から色々な話を伺いました。

取材を通じて改めて感じたポルトガルトレードの魅力。そのキーワードは
Typicity
そして、
冷静と情熱の、ちょうどあいだ
でした。

そしてそんな会社と事業をスタートするきっかけは、なんと中国にありました。

すべては中国進出から始まった

Pauloは元々、大学院修士課程でMicrobiology(微生物学)観点からのWine Makingを専攻。Selection of Natural Yeast(野生酵母の選択)等の研究などをしていたそうです。その中で、「自分には研究よりも実務的な仕事が合っているのではないか」という想いがずっとあったそう。

そんな矢先にある出会いが。1990年代からポルトガルワインに惹かれて「ポルトガルワインを中国に輸入すべきだ」と言い続けていた中国人でワイン醸造研究者のSunさん(専門はAnti-Oxidation)に出会います。そして2人は意気投合。その後、CFOとなるもう1人の共同創業者と3人で2006年にポルトガルで会社を設立し、中国への輸出開始。輸出量は順調に伸び、更にその後、マカオや香港にも進出しました。

手応えを感じていたPauloは、以前から関心のあった日本市場にも進出したい、と思うようになります。そこで日本の市場と市場開拓手法を学ぶべく、MBAの学位取得のために2014年に日本へ留学。その留学中に奥様の佳奈さんと出会い、交際を経て結婚。2015年にご夫婦でポルトガル・トレード株式会社を立ち上げ、2016年から日本での事業をスタートしたそうです。ポルトガルでの事業もあるので、2人は日本とポルトガルを頻繁に行き来しています。

Paulo & Kana Portugal Wine
ワインフェアでは2人のコンビネーションが光る。

馴れ初め的な話から、日本での事業スタート後の苦労話などもお伺いしたのですが、お2人に馴れ初めの話まで書いていいか確認してない(笑)のと、本特集の趣旨から離れてしまうこともあるので、それはまた別の機会に。(でもとても楽しそうに昔の話をしてくれました。まるでもっとずっと前の思い出話を話すかのように。お2人で苦労して事業をされていると、時が過ぎるのはあっという間なのかもしれませんね。)

事業を開始して5年。事業開始当初から比べれば格段に取り扱うワインのアイテム数が多くなっている(私がポルトガル・トレードに出会った2018年から比べても取扱いワインがかなり増えた)同社ですが、どのワインも個人的にかなり好きなんですよね。個人的趣向を外したとしても、ハズレがない。そしてちょっと他とは違う。そこで、

「どのような基準で取り扱うワイン生産者やワインを選んでいるんですか?」

気になっているこの質問をぶつけたところ、帰ってきたのがこのキーワードでした。

ポルトガルワインの「Typicity(らしさ)」を届ける

Pauloはいつも通りの落ち着いた、でもいつも以上に熱がこもった雰囲気をもって、こう返答してくれました。

As professional of Portugal wines, our ultimate goal is to fill the gap between wine producers of Portugal wines and consumers. For that goal, we focus on the expression of typicity of the wines in the region. We want to deliver the typicity of Portugal wines to consumers.

ポルトガルワインのプロとして、ポルトガル各地域のワインのTypicityの表現を重要視して、ワイン生産者を開拓し、ワインを選んでいる、と。

“Typicity”というのは、ワインにおいてある地域のワイン「らしさ」とか、「その地域で造られるワインならではの特徴、特色」といったことを意味する、ワイン界隈で使われる造語。英語だと本来はTypicalityですが、この言葉の持つ「典型的」というと意味だと、Typicityが表現したいこととは少しズレが出ます。だからこのような造語が作られたのかもしれません。

そんなTypicityを消費者に届け、ポルトガルワインの生産者と消費者を繋げたい。そんな想いで、葡萄品種や栽培・醸造手法、そして味わいなど様々なポイントにおいてTypicityを重要視して生産者やワインを選んでいるとのこと。

だからインターナショナルな葡萄品種だけで作るワインや、Typicityに欠けるワインは扱っていないそう。また消費者にポルトガルワインがどういうものかを知ってもらうためには、Mass-Market向きに作られた大量生産ワインは向かない、という想いもあり、基本的に取り扱っていないようです。

Campo de Poral ポルトガルトレード

言われてみて、あぁ、そうかぁ。確かになぁ、と。

例えば上の写真に映っているのは、ポルトガル・トレードが古くから取り扱っているヴィーニョ・ヴェルデの生産者、Quinta do Ermízio(キンタ・ド・エルミジウ)のワインたち。Campo de Porralはある意味クラッシックなヴィーニョ・ヴェルデのスタイル(爽やかな味わいでほんのわずかに発泡している)ではあるものの、口に含むと味わいはとても豊か。そして時間が経つとより香りや味わいが際立ってきます。同じ1000円台前半で買えるヴィーニョ・ヴェルデではあまり出会うことのない、長続きする良質の味わい。ワインのスタイルはその地域らしいのですが、少し他と違うワインなんですよね。

キンタ・ダ・デヴェサ
キンタ・ダ・デヴェサ2

また別の例として上の写真の生産者。ドウロ地方にあるQuinta da Devesa(キンタ・ダ・デヴェサ)は、ドウロ地方では伝統的なField Blend(様々な葡萄品種が混植されていて、生産者自身も正確な葡萄品種の割合を把握していない)の葡萄を混醸(葡萄品種を分けずに醸造)してワインを作っています。

そしてこの地域では伝統的に「ラガール」という石造りの発酵槽に葡萄を流し込んで足で踏んでワインを醸造。言うのは簡単ですが、ラガールで醸造すると急激にアルコール度が高くなる瞬間があるため、美味しいワインを作るのは結構大変。しかしDevesaはラガールを使って、クリーンながら様々な味わいのレイヤーがあるワインを作っているんですよね。またポートワインも卓越したものを作っている生産者です。非常に昔から使われている超大型のポートワイン用の古樽が、とても特徴的なワイナリー。

Devesa Port Wines
現地でここのポートワインを飲んで衝撃を受けました。

ラガールでの醸造はドウロ地方では伝統ですが、他の地方でもあるにはあります。アレンテージョという南の地域でもラガールで美味しいワインを作る生産者はいますが、逆にそれはTypicityとは言えないので、そういうものは扱っていない。逆にアレンテージョのワインとしては伝統的なヴィーニョ・デ・ターリャ(ターリャ、というアンフォラで作るワイン)を取り扱っていて、そこのワインも数多くのワイン評論家から高評価を得ています。またバイラーダ地域のワインも同社は扱っていますが、ダォン地域のワインは扱っていません。ダォンにも素晴らしい生産者や素晴らしいワインがあるのは分かっているものの、ワインの特徴としてバイラーダと大幅に違うとも言えないから、であればもっと別のTypicityを追いかけたい、とのこと。

このTypicityの徹底した追求が、他のインポーターとは異なるところではないか。そう感じました。

なお、Paulo曰く、やはりポルトガルワインの中でも他の国にはない特徴的な地域はドウロなので、今よりも更にドウロ地域のDry Wineとポートワインを深めたり、同地域の生産者と消費者間のコミュニケーションを深めるような活動がしたい、とのこと。ポルトガルワインと言えばドウロなんだ、ということをしきりに言っていました。

Quinta da devesa ドウロ ワイン
Quinta da Devesaも2019年に新しく開拓したドウロ地方のワイナリー。こういうところがこれからも増えることが期待されます。

代表のPauloだからこそできる、「冷静と情熱の、ちょうどあいだ」

しかし、Typicityを生産者に届ける、と言っても、Typicityがあってかつ美味しいワインを選び、毎年それを消費者に届ける、というのはそう簡単ではないと思います。

その地域らしいワインを届けよう、という生産者やインポーターは他にもたくさんいます。でも残念ながら、「Typicity」や「テロワール」を謳い文句にしながらも、欠陥のあるワインが少なくない、ということも結構あります。逆に美味しいワインだけれども、その地域らしいワインか、と言えば違う、ということもあります。

でも、ポルトガル・トレードはそれを成し遂げている。そう思います。

取材を通じて感じたのは、やはりこれはPaulo Ramosという人だからこそ出来る、「冷静と情熱の、ちょうどあいだ」によるものではないか、と。

Paulo Ramos パウロ ポルトガルトレード
冷静にワインを分析するPaulo。

彼はWSET Diplomaホルダーとして、客観的な品質評価のテイスティングを徹底して学んできており、かつ仕事でそのテイスティングを数多く実践してきています。私は生産者の通訳として彼と一緒にワイン生産者セミナーを何度かやっていますが、彼のティスティングコメントを聞くと「うぅむ、確かに」と思うことばかり。Typicityのあるワイン、というだけではなく、美味しいクリーンなワインを消費者に届ける。その観点から、非常に冷静に、いつもワインを客観的に評価しています。

またPauloはワイン醸造についても専門分野として学んできており、わずかな欠陥のあるワインをその観点からも見抜くことが可能。そしてそういった「冷静かつ明晰」なバックボーンがあるからこそ、ワイン生産者からも絶大な信頼を得ているんでしょう。しかもポルトガル語でポルトガル人としてコミュニケーションをとれることは大きな強み。日本人には真似しようがありません。

Paulo and Antonio
一緒にワイン生産者を訪れた時も時々ポルトガル語で生産者と話すPaulo。

一方でPauloは、ワイン醸造を理解したマーケティングのコンサル、という立場でもワイン生産者に寄り添っているそう。そして生産者と共に歩みながら、日本の消費者にポルトガルワインのTypicityを届けようと、情熱的にワイナリーに足を運んで頻繁にテイスティングしているんだそうです。そのTypicityや生産者への情熱・リスペクトがあるからこそ、生産者の絶大な信頼を得られているし、生産者とその想いを共有しているからこそ、Typicityへの情熱から逸れることがない。そのように感じました。

「冷静と情熱のあいだ」でワインを選ぶのはどのインポーターもやっていることかもしれません。でも、冷静な評価とTypicityへの情熱のどちらも少しも失わず、そのちょうどあいだで、消費者に橋渡しする価値があるワインなのかを見極める。これは相当難易度が高い。この匠の技ができるのが、ポルトガル・トレードの最大の強みではないでしょうか。

この強みを生かし、今も少しずつ新たな生産者・新たなワインを開拓しています。

Howard's folly ワイン
最近またまた面白い生産者(Howard’s Folly)のワインの取り扱いも開始。革新と伝統を融合させたワインをアートと共に作るワイナリー。

そしてPauloがそれに集中できるのは、パートナーの佳奈さんが物流・輸入からマーケティング・配送・販促等々まで様々な業務をそつなくこなしているから、ということも間違いないと取材して感じました。佳奈さんもスーパーウーマンなんですよね。試飲会で一緒にワイン販売をしたことがありますが、彼女の販売力には舌を巻きました。そして素直な日本の一消費者として、Pauloのワイン選定にも一役かっているんでしょうね。

Not Super Good. But Good and Different.

取材の最後に、もう1つ気になっていたことを聞いてみました。それは2人から見て、ポルトガルワインってどういうワインなのか?どんなところが魅力なのか?ということです。

Pauloは、真面目な表情ながらも笑顔で、かつ熱を帯びた感じで、こう答えてくれました。

We want consumers to enjoy treasure to discover good and different wines of Portugal. There are many “very good” or “super-good” wines all over the world. There are also super-good wines and very good wines in Portugal. But, you know, what Portugal wines attracts many people is, “good and different.” That’s what Portugal wines are.

世界には値が張るがものすごく美味しいワインがたくさんある。もちろんポルトガルにもそういうワインはある。でもポルトガルワインの中心的な魅力、それは手の届きやすい、美味しくて、他とはちょっと違うワイン。そういったワインを見つけられる冒険の旅を多くの人に楽しんでほしい。これがPauloが言いたかったことだと思います。

佳奈さんからはこんな返事が。

日本とポルトガルは食事の味付け具合とか食文化の点で似ているところが結構あるんですよね。ポルトガルの食事に合うポルトガルワインは日本人の口にも合いやすいと思うし、日本の食事に寄り添うことのできるものも多いと思います。

ポルトガルワインの認知度はまだまだ低くて、そのために手がまだ出せていない人も結構いるかな、と。ただ飲んでみるとその美味しさ、魅力に必ず気づくと思うので、まずはぜひトライして欲しい。そこで新しい発見があれば、更に試してみたくなるから。きっとその奥深さに引き込まれます。絶対そう。

そうかもしれませんね。ポルトガルワインって基本的に複数の葡萄品種がブレンドされているワインが多いですが、葡萄品種のほとんどが地葡萄でかつブレンドということもあり、飲む前から味わいの想像をつけるのが難しい。でもいざ飲んでみると、

「えっ、なんじゃこりゃ、美味しい。あんま飲んだことないなこのタイプ」

ってなること、結構あるんですよね。

だから佳奈さんが言うとおり、ちょっと勇気を振り絞って飛び込めば、それを受け止めてくれる十分な懐の深さがポルトガルワインにある気がします。飛び込んだ者でないと感じることのできない、ポルトガルワインの面白さと奥深さが。

それを十二分に感じさせてくれるのが、ポルトガル・トレードのワイン。そう強く感じました。

Paulo、佳奈さん、どうもありがとうございました。

ぜひ一度飛び込んでみてください。ポルトガル・トレードのワインの世界へ。

ポルトガルトレード ワイン

General Information

ポルトガル・トレード株式会社
website:https://portugaltrade.co.jp/
問合せ:https://portugaltrade.co.jp/contact