書籍紹介

[書籍]大岡弘武のワインづくり

「自然派ワインのこと、どのくらい知ってますか?」

と聞かれれば、自分なりの知識で思い想いの考えや知識を話すことのできるワインラヴァーやワインファンの方はけっこういると思います。

では、

「自然派ワインを造る生産者誰でもいいので、その人の生き様とか考え方について、語れる人、いますか?」「そしてその人がどのような葡萄をどのように育て、どのようなワイン造りをしていて、なぜそのような葡萄を選び、なぜそのような葡萄の育て方をして、なぜそのようなワインの造り方をしているか、語れますか?」

と聞かれたら、語れる人、多いでしょうか。

私たちは、理論は知っていても、自然派の造り手の「生き様」や「価値観」とか、具体的にどういうことを考えて具体的にどのように葡萄品種を選び・どのような栽培・ワインの造り方をしているのか、といったより詳細な実例と裏にある考え方を、意外と知りません。

この本は、自然派ワインの造り手として日本人では抜きん出て有名な、ラ・グランド・コリーヌの「大岡弘武」さん(プロフィールは末尾に記載)が「ワインづくり」について書く本。大岡さんの「価値観」という名のレンズを通じて、自然派ワイン造りにまつわる様々な具体的なエピソードや考え方などを垣間見ることのできる、貴重な1冊。

大岡弘武のワインづくり 本
大岡弘武のワインづくり ー 自然派ワインと風土と農業と
(出版:エクスナレッジ(2021/9/3))

日本でワイナリーを造ろう、と思っている方からすれば、ヤフオクなどで必要な機器を購入する方法や、予想外にぶつかる法律上の壁なんかにも触れていて、間違いなく必読の1冊です。

個人的には、大岡さんがフランスから日本に移ってきたときの家づくりや醸造所探しの話もとても面白く、ついつい「うそぉー!!そんなことまでしたのぉ!?」と独り言でツッコミながら読んだりしました。それと同時に、次のような話もたくさん散りばめられていて、感心しっぱなしになります。

・なぜピジャージュが重要でなぜ足で踏むのか
・摘芯をしないでどうやって葡萄の樹の成長を実に集約させられるのか
・なぜ雨除けをしないのか
・なぜ山葡萄は日本に合っていて、だけど何が大変なのか。
・岡山の温室ハウスを利用し、なぜ温室ハウスの壁沿いに葡萄の樹を植えるのか
こういった話が特に後半は盛り沢山。

そして何より、このガラス製温室ハウスの写真が、個人的には衝撃的だったなぁ。ここで、一切水をあげることをせずに、シラーが育てられているそうです。

大岡弘武のワイン 岡山温室ハウス

ワイン好きは見逃すと後悔する1冊であること間違いなしです。

大岡弘武のワインづくり ー 自然派ワインと風土と農業と
(出版:エクスナレッジ(2021/9/3))

■著者プロフィール
(本書籍の出版社であるX-Knowledgeのウェブサイトより引用)

大岡弘武(おおおか・ひろたけ)

1974年東京生まれ。1997年明治大学理工学部卒業、同年ボルドー大学醸造学DNO(醸造士コース)入学。1999年同大学を中退、ボルドーBTSA(醸造栽培上級技術者養成校)に入学、2001年同資格取得。2001年〜2002年ギガル社でエルミタージュ地区栽培長、2002〜2006年ドメーヌ・ティエリー・アルマンの栽培長を務める。2002年ラ・グランド・コリーヌ社を設立、フランスにおける日本人の個人ワイナリーのパイオニアとなる。2013年『ニューヨーク・タイムズ』(世界版)に取材を受け、世界の一流レストランでワインが採用されるようになった。2016年帰国。ラ・グランド・コリーヌ・ジャポン社を立ち上げ、岡山県で葡萄栽培とワイン醸造を開始。2021年、一般社団法人おかやま葡萄酒園を設立。現在、日仏でワインづくりのコンサルティングを行う。訳書に『ピエール・オヴェルノワ 実りの言葉』(ラ・グランド・コリーヌ・ジャポン、2017年)がある。